肥満治療は「体重を減らすだけ」ではありません|リバウンドを防ぐために大切なこと

2026/9/5

肥満治療というと、食べる量を減らしたり、運動したり、最近では薬で体重を落としたり、といった方法を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、治療の本当の目的は、体重計の数字を減らすことだけではありません。なぜ体重が増えたのか、その背景を確認し、糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝などの健康障害の予防・改善につなげながら、無理なく健康を維持できる状態をつくることが何より大切なのです。

◾️「肥満」と「肥満症」は同じではありません

日本では、BMIが25以上の場合を「肥満」と判定します。

BMIは、次の式で計算します。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

ただし、BMIが25以上であれば、すべての方に薬物療法が必要というわけではありません。

BMIが25以上で、肥満に関連する健康障害がある場合や、内臓脂肪の蓄積によって健康障害が予測され、医学的に減量が必要と判断される状態を「肥満症」といいます。

一方、BMIだけでは、筋肉量、脂肪の分布、年齢による体組成の変化などを十分に評価できません。そのため、体重やBMIだけで治療方針を決めず、身体全体の状態を確認する必要があります。

◾️体重が増える理由は、食事量だけではありません

体重の変化には、食事と運動だけでなく、次のような要因が複雑に関係しています。

  • 食事内容や食事時間

  • 日常の身体活動量

  • 筋肉量の低下

  • 睡眠不足や睡眠の質

  • 心理的ストレスや過食

  • 加齢や更年期に伴う変化

  • 糖代謝や脂質代謝の状態

  • 甲状腺などの内分泌疾患

  • 服用している薬の影響

  • 遺伝的な体質や生活環境

「それほどたくさん食べていないのに体重が増える」という場合もあります。食事量だけでなく、食事の内容、間食や飲み物、睡眠、身体活動量、服薬状況、体組成などを一緒に確認することが重要です。

極端な食事制限を続けると、必要な栄養素が不足したり、筋肉量まで減少したりする可能性があります。体重が減っても、必ずしも健康状態が改善しているとは限りません。

◾️肥満治療で確認したいこと

肥満治療では、体重だけでなく、次のような項目を確認します。

  • BMIと腹囲

  • 血圧

  • 体脂肪量と筋肉量

  • 血糖値、HbA1c

  • 中性脂肪、LDL・HDLコレステロール

  • 肝機能

  • 腎機能

  • 甲状腺機能など、症状に応じた検査

  • 月経や更年期に関する変化

  • 睡眠、いびき、日中の眠気

  • 食行動や心理的ストレス

  • 現在の服薬内容

血液検査は、単に基準値の範囲内か範囲外かを見るだけではありません。一つの数値だけで判断せず、症状、既往歴、体組成、生活状況などと合わせて総合的に評価します。

ただし、基準値内の検査値だけから、特定の栄養不足や代謝異常を確定できるとは限りませんので、必要に応じて追加検査を行い、一般的な内科疾患の可能性も含めて確認します。

◾️治療は、食事・運動・行動・薬を組み合わせます

肥満症の治療は、食事療法、身体活動、行動変容を基本とし、必要な場合に薬物療法などを組み合わせます。

<食事>

大切なのは、単に食べる量を減らすことではなく、必要な栄養を確保しながら、過剰なエネルギー摂取を調整することです。

具体的には、次のような小さな変更から始めます。

  • 甘い飲み物を水や無糖のお茶に替える

  • 毎食、たんぱく質を意識する

  • 野菜や食物繊維を取り入れる

  • 夜遅い時間の食事を見直す

  • 食事を抜いた反動による過食を防ぐ

一律に糖質や脂質を禁止するのではなく、生活状況、健康状態、検査結果、継続しやすさを踏まえて調整します。

<身体活動>

最初から完璧な運動を目指す必要はありません。

例えば、「夕食後に10分歩く」「エレベーターではなく階段を選ぶ」「座り続ける時間を短くする」など、具体的で実行しやすい行動から始めます。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、今より少しでも多く身体を動かすことに加え、成人では筋力トレーニングを週2~3日取り入れることが推奨されています。

体重を減らすことだけでなく、減量中の筋肉量や身体機能を守るという視点も大切です。

<行動変容>

「運動を頑張る」「食事に気をつける」という大きな目標だけでは、日常生活の中で何をすればよいか分かりにくくなります。

当院では、一人ひとりの生活に合わせて、例えば次のような具体的な行動へ置き換えていきます。

  • 「毎日30分運動する」ではなく「夕食後に10分歩く」

  • 「糖質を全部やめる」ではなく「甘い飲み物を水に替える」

  • 「たんぱく質を増やす」ではなく「朝食に卵を1個加える」

行動は、小さく具体的にするほど始めやすく、続けやすくなります。できなかったことだけに目を向けるのではなく、実行できたことも一緒に確認しながら、その方の生活に合った次の目標を考えます。

一方的に方法を指示するのではなく、無理なく続けられる方法を一緒に見つけ、日々の変化に伴走することを大切にしています。

◾️肥満症治療薬は「主役」でも「敵」でもありません

GLP-1受容体作動薬などの肥満症治療薬は、医学的な適応がある方にとって有効な選択肢となり得ます。

一方で、すべての方に適しているわけではありません。既往歴、現在の体格、合併症、服薬状況、妊娠・授乳の有無などを確認し、医師が適応を判断する必要があります。吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの副作用がみられることもあります。

薬によって食欲が軽減している期間を、食事の整え方や身体活動など、今後も継続できる習慣を身につける機会として活用することが重要です。

当院では、薬だけで治療を完結させるのではなく、栄養状態、筋肉量、生活習慣などを確認しながら治療を進めます。

◾️薬をやめれば治療成功、とは限りません

肥満症は、長期的な管理を必要とすることがある疾患です。

肥満症治療薬の中止後には、体重が再び増加する方がいることが複数の研究で報告されています。これは単純に「本人の意思が弱いから」ではありません。

減量後には、食欲やエネルギー消費などに変化が生じ、身体が元の体重へ戻ろうとする反応が関係することがあります。

そのため、最初から「全員が短期間で薬をやめること」を治療の正解にはしません。治療の目標は、一人ひとり異なります。

  • 必要な薬を適切に継続する

  • 状態を確認しながら減量する

  • 薬を中止した後も体重を維持する

  • 筋肉量や栄養状態を守る

  • 血糖、血圧、脂質などを改善する

  • 健康的な生活を無理なく継続する

薬の継続、減量、中止については、効果、副作用、費用、ご本人の希望を踏まえて個別に判断します。自己判断で急に中止せず、処方医にご相談ください。

◾️体重管理について相談する目安

体重管理について医療機関へ相談するタイミングは、BMIの数値だけでは決まりません。

日本ではBMI 25以上を「肥満」と判定し、BMI 25以上で肥満に関連する健康障害や内臓脂肪の蓄積がある場合には、「肥満症」に該当する可能性があります。

BMIが25未満でも、次のような変化やお悩みがある場合はご相談いただけます。

  • 急に体重が増えた

  • 腹囲が増えてきた

  • 血糖値、血圧、脂質の変化を指摘された

  • 月経不調や更年期に伴って体重が増えた

  • 食事や運動を見直しても改善しない

  • ストレスによる過食や食行動が気になる

  • 体重について、どこへ相談すればよいか分からない

相談することが、すぐに薬物療法を始めることを意味するわけではありません。まずは体重が増えた背景や現在の健康状態を確認し、治療が必要か、どのような方法が適しているかを一緒に考えます。

◾️当院が大切にしていること

当院の肥満・体重管理外来では、「何kg減らすか」だけを治療の目的にはしていません。

🌿 一人ひとりが無理なく実行できる方法を一緒に見つけ、継続できる健康づくりに伴走します🌿

体重増加の背景にある身体の状態、食生活、睡眠、ストレス、生活環境などを確認し、その方に合った目標を一緒に考えていきます。

必要に応じて血液検査や体組成測定を行い、食事、身体活動、行動面への支援と薬物療法を組み合わせます。BMIだけで薬を処方するのではなく、検査結果、既往歴、服薬状況などを確認したうえで、一人ひとりに合った方法をご提案します。診察の結果、薬物療法が適さないと判断する場合もあります。

治療中には、体重や検査値だけでなく、「できるようになったこと」や生活の変化も一緒に確認します。ご本人の希望や生活に合わせて、目標や方法を調整していきます。

医療としてのダイエットの価値は、体重が何kg減ったかだけではなく、減量によって将来の健康や日々の生活がどれだけ改善するかにあると考えています。

◾️よくあるご質問

Q: 食事量が少ないのに体重が増えます。薬を使えますか?

 食事量が少なく見えても、飲み物や間食、食事時間、身体活動量、睡眠、体組成、服薬などが影響している場合があります。また、症状によっては甲状腺機能などの確認が必要な場合もあります。

薬の適応を判断する前に、体重増加の背景と現在の健康状態を確認します。

Q: BMIが25以上なら、肥満症治療薬を使用できますか?

BMIだけでは決まりません。健康障害の有無、既往歴、現在の治療、服薬状況、薬の禁忌などを含めて医師が判断します。診察の結果、薬物療法が適さない場合もあります。

Q: 健康診断で異常がなくても相談できますか?

ご相談いただけます。

一般的な健康診断だけでは、体組成、食行動、睡眠、心理的ストレスなどを十分に評価できないことがあります。お持ちの健診結果を確認し、必要な評価をご提案します。

Q: 薬はどのくらい続けますか?

治療期間は一律ではありません。当院では、効果や副作用、体重・体組成の変化、食生活などを定期的に確認しながら、継続、減量または中止を個別に検討します。

薬を漫然と続けることを前提とせず、必要な期間に適切に活用しながら、食事や身体活動など、治療後も続けられる生活習慣を整えることを大切にしています。

一方で、薬の中止後に体重が再び増加する場合もあります。自己判断で中止せず、その後の体重管理についても医師にご相談ください。

Q: 体重はどのくらい減らせばよいですか?

目標は、合併症や現在の状態によって異なります。

日本肥満学会では、単にBMIを25未満にすることではなく、内臓脂肪を減らして、肥満に関連する健康障害を予防・改善することを重視しています。一人ひとりの状態に合わせて、無理のない目標を設定していきます。

当院の診療について

当院の肥満・体重管理外来およびメディカルダイエット診療は自由診療で、健康保険は適用されません。

診察の結果、薬物療法が適していると判断された場合には、ひと月ごとの処方が可能です。

まずはLINEでの事前相談、または初診をご利用ください。オンライン診療にも対応しています。

※LINEでの事前相談では、診断や薬の処方可否の判断は行っていません。診断や治療方針の決定には、医師による診察が必要です。

参考資料

  1. 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
    https://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html

  2. 日本肥満学会「あなたの肥満、治療が必要な『肥満症』かも!?」
    https://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html

  3. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
    https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf

  4. World Health Organization. WHO issues global guideline on the use of GLP-1 medicines in treating obesity. 2025.
    https://www.who.int/news/item/01-12-2025-who-issues-global-guideline-on-the-use-of-glp-1-medicines-in-treating-obesity

  5. Wilding JPH, et al. Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide: The STEP 1 trial extension. Diabetes Obes Metab. 2022.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35441470/

  6. Jensen SBK, et al. Healthy weight loss maintenance with exercise, liraglutide, or both combined followed by one year without treatment. eClinicalMedicine. 2024.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38544798/

監修:淺沼 悦子
医学博士/日本内科学会認定内科医/心療内科専門医/日本抗加齢医学会専門医
リタリス・ヘルスケアクリニック院長

公開日:2026年9月5日
最終更新日:2026年9月5日

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものです。個別の診断や治療については、医療機関へご相談ください。